アクリル絵具で起こりやすい失敗とその解決策

アクリル絵具は発色が鮮やかで扱いやすく、初心者からプロまで幅広い層に人気のある画材です。しかし、使い方を誤ると、思ったような仕上がりにならなかったり、作品が長持ちしなかったりすることがあります。本記事では、アクリル絵具で起こりやすい失敗と、その具体的な解決策を詳しく解説します。

絵具がすぐに乾いてしまう

原因

アクリル絵具は水性で乾燥が早いため、パレットの上でもキャンバス上でもすぐに乾いてしまいます。特に暑い環境や風通しの良い場所では、乾燥速度がさらに速まります。

解決策

  • リターダーを使用する

アクリル絵具専用の「リターダー(遅乾剤)」を混ぜることで、乾燥速度を遅くできます。リターダーの量はメーカー推奨の比率を守りましょう。

  • ミストスプレーで水分を補う

絵具やパレットに時々水をスプレーして湿らせると、乾燥を遅らせることができます。

  • ウェットパレットを活用する

ウェットパレットを使用すると、長時間絵具を新鮮な状態に保つことができます。自作する場合は、密閉容器に湿らせたスポンジとクッキングシートを敷けばOKです。

  • 作業環境を整える

エアコンや扇風機の風が直接当たらない場所で作業し、湿度が低すぎない環境を整えると、乾燥を防げます。

絵具が定着せず剥がれる

原因

アクリル絵具は、油分やホコリが付着した面には定着しにくいです。また、下地処理が不十分な場合や、厚塗りしすぎた場合にも剥がれやすくなります。

解決策

  • 表面をしっかり清掃する

油分やホコリがあると絵具が密着しにくいので、キャンバスや木板の表面をきれいに拭いておきましょう。

  • ジェッソを下地に塗る

ジェッソを塗ることで絵具の密着性が向上し、剥がれを防げます。特に木材やプラスチックなど吸収性の低い素材には必須です。

  • 適度な厚さで塗る

一度に厚塗りすると、乾燥時に収縮して剥がれることがあります。薄く塗り重ねるのがコツです。

絵具がひび割れる

原因

厚塗りしすぎたり、下地と上の絵具の乾燥速度が違ったりすると、ひび割れが発生しやすくなります。

解決策

  • 薄く塗り重ねる

1回の塗布を薄めにして、しっかり乾燥させながら何度も重ねることで、ひび割れを防げます。

  • フレキシブルなメディウムを使用する

「フレキシブルメディウム」を混ぜると、絵具が柔軟性を持ち、ひび割れにくくなります。

  • しっかり乾燥させる

層ごとに完全に乾燥するまで待つことが大切です。特に厚塗りの場合、表面だけでなく内部も乾くように時間をかけましょう。

乾燥後の色が違う

原因

アクリル絵具は乾燥すると色が少し暗くなる傾向があります。これは、絵具内の水分が蒸発し、顔料が圧縮されるためです。

解決策

  • 乾燥後の色を想定して調色する

事前に試し塗りをして、乾燥後の色を確認してから作業すると、意図した色を作りやすくなります。

  • 透明なメディウムを混ぜる

透明なグロスメディウムを混ぜることで、乾燥後の色の変化を抑えられます。

  • 白を少し足す

乾燥後の色を明るく保ちたい場合、少量の白を加えると効果的です。ただし、色の鮮やかさが変わる可能性があるので注意しましょう。

筆が固まる

原因

アクリル絵具は乾燥すると耐水性になるため、筆を放置すると固まってしまいます。

解決策

  • 使用後すぐに洗う

絵具が乾かないうちに水で洗いましょう。固まってしまうと落とすのが難しくなります。

  • ぬるま湯と石鹸で洗う

筆専用のクリーナーがない場合は、ぬるま湯と石鹸で優しく洗うと効果的です。

  • 固まってしまった場合の対処法

専用のブラシクリーナーに浸すか、ぬるま湯に少量の酢を混ぜて試してみましょう。ただし、完全に固まると元に戻らないこともあります。

色が濁る

原因

混色しすぎると、色が濁ってしまい、鮮やかさが失われます。

解決策

  • 混色を最小限にする

できるだけ少ない色で混ぜるようにし、3色以上混ぜるのは避けましょう。

  • パレットを清潔に保つ

汚れたパレットを使うと、意図しない色が混ざってしまいます。こまめに拭き取ることが大切です。

  • 透明色を活用する

不透明色ばかりを混ぜると濁りやすいので、透明色を適度に使いましょう。

まとめ

アクリル絵具は使いやすい反面、乾燥が速い、ひび割れやすい、色が変わるなどのトラブルが発生しがちです。しかし、適切な方法を知っておけば、これらの問題を回避し、思い通りの作品を仕上げることができます。

今回紹介した解決策を活用して、アクリル絵具をもっと自由に楽しんでみてください!

ABOUT US
満園 和久
3歳の頃、今で言う絵画教室に通った。その絵の先生はお寺の住職さんであった。隣町のお寺で友達の3歳児とクレヨン画を学んだ。 それ以降も絵を描き続け、本格的に絵画を始めたのは30歳の頃。独学で油彩画を始め、その後すぐに絵画教室に通うことになる。10年ほどの間、絵画教室で学び、団体展などに出展する。 その後、KFSアートスクールで学び油彩画からアクリル画に転向しグループ展や公募展等に出品し続け現在に至る。 ここ20年程は、「太陽」「富士山」「天使」をテーマにして絵画を制作。 画歴は油彩を始めてから数えると35年になる。(2024年現在) 愛知県生まれ 愛知県在住 満園 和久 (Mitsuzono Kazuhisa)