マスキングテープを活かした表現法|絵画やデザインに広がる可能性

はじめに

絵画やデザイン制作において、マスキングテープは単なる養生用の道具にとどまりません。

紙やキャンバスに貼ることで描画範囲を制御したり、意図的に余白や模様を作ったりと、多彩な表現を実現できる便利なツールです。

近年では、画材メーカーからアート向けの専用マスキングテープも販売されており、その用途はますます広がっています。

この記事では、マスキングテープを活かした表現法を基礎から応用まで徹底解説し、絵画・イラスト・デザイン制作に役立つ活用アイデアをお届けします。

マスキングテープの基本的な役割

まずは、マスキングテープの基本的な機能を整理しましょう。

  1. 描画範囲の保護
    絵具やインクがはみ出すのを防ぐために使用。特にアクリル画や水彩画で直線的な境界を作りたいときに有効です。
  2. 余白や形の確保
    テープを貼ることで、紙やキャンバスに白抜き部分を残すことが可能。文字やシルエットを際立たせたい場合に役立ちます。
  3. 複数レイヤーのコントロール
    レイヤーを重ねる際に、塗り分けを正確に行うための区切り線として機能します。

このように、マスキングテープは「消極的に守る」だけでなく「積極的に形をつくる」ための表現道具として活用できます。

マスキングテープを使った基本表現

1. 直線的なラインの表現

もっとも基本的な使い方は、直線を引くためにテープを貼る方法です。

  • 幾何学模様や建築物の描写
  • グラデーションを背景に作る際の区切り
  • ポスターやデザイン作品でのシャープなライン

貼る角度や幅を工夫するだけで、作品に構造的なリズムを与えられます。

2. 白抜きや形抜き

テープで特定の形を覆ってから彩色し、剥がすとその部分が白く残ります。

  • 太陽や星などのモチーフ
  • タイトルや文字部分を目立たせるためのマスキング
  • ロゴやシンボルのシルエット表現

自由に形を切って使えば、オリジナルのステンシル的表現も可能です。

3. 重ね塗りの制御

背景を塗った後、テープで区切って新しい色を重ねると、色同士がにじまず鮮やかな境界線が生まれます。特にアクリルやガッシュでは効果的です。

応用的な表現テクニック

1. 不規則なテープ貼りで偶然性を活かす

テープをランダムに貼り、彩色後に剥がすと、偶然性を含んだ抽象的な模様が生まれます。

  • 抽象画にリズムを加える
  • 風景画で光や影の表現に応用
  • デジタル的な模様をアナログで再現

2. 細切りマスキングによる繊細な線

テープを細く切り分けて貼ることで、髪の毛や光の筋のような細い表現が可能です。ナイフやカッターで切ると自由度が増します。

3. 重層的な模様作り

1回目の塗りを乾かしてからテープを貼り直し、再度彩色を繰り返すと、層のあるパターンが生まれます。幾何学模様やモダンデザインに向いています。

4. 剥がす瞬間の表現

テープを完全に剥がさず、途中で裂いたり、少し浮かせてから彩色することで、意図的なかすれや破れ表現も生み出せます。偶然性を作品に取り入れたい場合に有効です。

マスキングテープを使う際の注意点

  1. 紙を傷めないように選ぶ
    和紙タイプの低粘着テープが適しています。特に水彩紙では粘着が強すぎると紙が破れることがあります。
  2. しっかり押さえる
    隙間があると絵具が染み込み、きれいなラインが出ません。指やローラーでしっかり密着させましょう。
  3. 剥がすタイミング
    完全に乾く前に剥がすと、境界がきれいに出やすいです。乾きすぎると絵具が割れてしまうこともあります。
  4. テープの保存
    高温多湿の場所に置くと粘着力が落ちたり、剥がしにくくなるため、気温変化の少ない環境で保管しましょう。

アートジャンルごとの活用例

水彩画

  • マスキング液と併用して光の表現を強調
  • 空や水面のハイライトを白抜きで残す

アクリル画

  • 幾何学模様や抽象画での直線的表現
  • レイヤー構造をきれいに分けるための区切り

イラスト・デザイン

  • タイトル文字の強調
  • ポップアートやグラフィック風の彩色

デジタルと併用

作品をスキャンし、マスキング表現を取り入れた部分をデジタルで加工すると、より現代的な仕上がりになります。

実践アイデア集

  • 太陽の光線表現:放射状にテープを貼ってから彩色し、剥がすと光の筋が残る。
  • 富士山のシルエット:山型にテープを貼り、背景の空だけを彩色。剥がすと雄大な山が浮かび上がる。
  • 天使の羽根:羽根の形に切ったテープを貼り、背景にグラデーションを加える。白抜きされた羽根が幻想的に映える。
  • モザイク風パターン:小さな四角形にテープを貼り分け、色ごとに塗り分ける。現代アート的な雰囲気を作れる。

まとめ

マスキングテープは、単なる養生道具ではなく、作品の構成や表現を支える重要な画材です。

直線や余白の確保といった基本的な役割にとどまらず、偶然性を活かした模様づくりや層を重ねたデザイン表現にも応用できます。

絵画・イラスト・デザイン制作において、マスキングテープを積極的に活用することで、作品の幅が大きく広がり、独自の表現を生み出す可能性が高まります。

ぜひ、実際の制作に取り入れて、新しいアートの扉を開いてみてください。

ABOUT US
満園 和久
3歳の頃、今で言う絵画教室に通った。その絵の先生はお寺の住職さんであった。隣町のお寺で友達の3歳児とクレヨン画を学んだ。 それ以降も絵を描き続け、本格的に絵画を始めたのは30歳の頃。独学で油彩画を始め、その後すぐに絵画教室に通うことになる。10年ほどの間、絵画教室で学び、団体展などに出展する。 その後、KFSアートスクールで学び油彩画からアクリル画に転向しグループ展や公募展等に出品し続け現在に至る。 ここ20年程は、「太陽」「富士山」「天使」をテーマにして絵画を制作。 画歴は油彩を始めてから数えると35年になる。(2024年現在) 愛知県生まれ 愛知県在住 満園 和久 (Mitsuzono Kazuhisa)