光と影を強調するための色の選び方

レンブラント・ファン・レイン「自画像」1658年

絵画やイラストにおいて「光と影」は、作品に立体感や奥行きを与え、観る人の感情に直接働きかける重要な要素です。

特に色の選び方次第で、光の眩しさや影の深さが強調され、表現力が格段に高まります。

本記事では、光と影を際立たせるための色彩の活用方法や具体的なテクニックを詳しく解説します。

光と影の基本原則

光と影の役割

光は対象を浮き上がらせ、影は奥行きを与えます。両者のコントラストを強調することで、平面的な画面に立体感が生まれます。

  • 光: 観る人の視線を集め、焦点をつくる。
  • 影: 重厚感や雰囲気を生み、物語性を強調する。

明度差の重要性

光と影を描く上で最も大切なのは「明度差」です。明るい部分をより明るく、暗い部分をより暗く表現することで、視覚的なインパクトが増します。

光を強調するための色選び

高明度・高彩度の色を活かす

光を表現する場合、明度の高い色(白に近い色)や鮮やかな色を用いると効果的です。特に黄色やオレンジは太陽光の暖かさを感じさせ、青や白は冷たい光や月明かりを表現できます。

  • 暖色系(黄・橙・赤): 太陽光、温かみのある室内光に適用。
  • 寒色系(青・白・薄紫): 月光、朝焼けや夕暮れの透明感を演出。

補色を使った光の演出

光の周囲に補色を配置すると、光の部分がさらに明るく感じられます。たとえば、青い背景に黄色い光を置くと、互いの色が引き立て合い、視覚的な輝きが生まれます。

影を強調するための色選び

黒ではなく「色味のある影」を使う

影を描くときに単純に黒を使うと、画面が平板で重たくなってしまいます。実際の影には光の反射や周囲の色が映り込むため、紺、深緑、紫、茶色などを混ぜると自然で深みのある影になります。

補色を取り入れる影の表現

光の色に対して補色に近い色を影に使用すると、色彩的な調和が生まれます。たとえば、暖かいオレンジの光なら、影には青や紫を加えると奥行きが強調されます。

光と影のコントラストを活かすテクニック

グラデーションで繋ぐ

光から影への移行を滑らかにするために、中間色のグラデーションを入れることが大切です。例えば、白から黒へ直接移るのではなく、黄色やオレンジを経由して暗色に繋げると自然な印象になります。

エッジを強調する

光が最も強く当たる部分と影の境界には、ハイライトやリムライトを入れるとドラマチックな効果を得られます。特に人物や物体の輪郭に光の縁取りを描くと、劇場的な雰囲気が出ます。

光と影の色彩心理

光が与える心理的効果

  • 黄色や白の光: 希望、喜び、活力
  • 青白い光: 静けさ、神秘、冷静

影が与える心理的効果

  • 青や紫を含む影: 神秘性、幻想的な雰囲気
  • 赤や茶を含む影: 重厚感、情熱、緊張感

色彩心理を意識して選ぶと、作品のメッセージ性がより強まります。

実践的な配色例

太陽光を表現する場合

  • 光:レモンイエロー+ホワイト
  • 影:群青色+バーントシェンナ

月光を表現する場合

  • 光:ライトブルー+ホワイト
  • 影:深い紫+グレー

室内照明を表現する場合

  • 光:オレンジ+イエロー
  • 影:ブルーグレー+ダークブラウン

初心者が避けるべき色選びの失敗

  1. 黒一色で影を描く → 立体感が失われる
  2. 光の色と影の色が同系統すぎる → コントラスト不足でぼやけた印象に
  3. 彩度が高すぎる色ばかりを使う → 画面が雑然とする

影に「ニュアンスのある暗色」を、光には「鮮やかなアクセント」を使うことで、表現力が格段に上がります。

光と影を活かした名画の分析

  • レンブラントの肖像画:暗い背景に明るい顔や手を浮かび上がらせる「レンブラント光」で有名。
  • クロード・モネの風景画:時間帯によって光と影の色を変化させ、印象を豊かにした。
  • カラヴァッジョの宗教画:強烈な光と深い影のコントラスト(キアロスクーロ)でドラマを演出。

名画を参考にすると、色彩の選び方と心理的効果を学ぶことができます。

光と影の色選びに役立つ画材

  • アクリル絵具: 発色が鮮やかで重ね塗りに適している
  • 油絵具: 滑らかなグラデーションで光と影の移行を表現しやすい
  • 透明水彩: 光の透過感を活かして淡い影を描ける
  • パステル: 柔らかい光や空気感を強調するのに最適

練習方法と実践のポイント

光と影を強調する色の選び方を身につけるには、実際に観察しながら描くことが最も効果的です。

まずは静物をテーブルに置き、一方向からライトを当ててみましょう。

光源を固定することで、光の当たる部分と影の落ちる部分が明確になり、色の選び方を試す良い練習になります。

さらに、時間帯を変えて同じモチーフを描くと、光の色温度や影の濃さがどのように変化するかを体感できます。

また、写真をモノクロ化して明暗の関係を把握したうえで、実際に色を当てはめる練習もおすすめです。

これにより「どの色を選べば影が自然に見えるか」「どの彩度が光を最も引き立てるか」といった判断力が養われます。

日々の小さな実験の積み重ねが、光と影を自在に操る表現力へとつながります。

まとめ

光と影を強調する色選びのコツは、単に明暗をつけるのではなく、光には明るく鮮やかな色、影には色味を含んだ暗色を用いることにあります。

さらに、補色関係を活かすことでコントラストが強調され、より印象的な作品になります。

  • 光:高明度・高彩度の色
  • 影:黒一色ではなく、色味のある暗色
  • 補色やグラデーションで自然な移行を演出

これらのポイントを意識すれば、作品にドラマ性と深みが生まれ、観る人を惹き込む力を持つでしょう。

ABOUT US
満園 和久
3歳の頃、今で言う絵画教室に通った。その絵の先生はお寺の住職さんであった。隣町のお寺で友達の3歳児とクレヨン画を学んだ。 それ以降も絵を描き続け、本格的に絵画を始めたのは30歳の頃。独学で油彩画を始め、その後すぐに絵画教室に通うことになる。10年ほどの間、絵画教室で学び、団体展などに出展する。 その後、KFSアートスクールで学び油彩画からアクリル画に転向しグループ展や公募展等に出品し続け現在に至る。 ここ20年程は、「太陽」「富士山」「天使」をテーマにして絵画を制作。 画歴は油彩を始めてから数えると35年になる。(2024年現在) 愛知県生まれ 愛知県在住 満園 和久 (Mitsuzono Kazuhisa)