抽象画は、写実的な絵のように「何が描かれているか」が一目で分からないため、少し難しいと感じる方も多いかもしれません。しかし抽象画の魅力は、鑑賞者によって意味が変わり、“自分だけの感性で楽しめる”ところにあります。
ここでは、抽象画を見るときのポイントを解説します。
1. まずは“答えを探さない”ことから始める
抽象画に対して
「これは何を描いているんだろう?」
「作者の意図は?」
と考えすぎると、せっかくの自由な体験が狭くなってしまいます。
抽象画の鑑賞で大切なのは、
- 正解を探さない
- 意味づけを急がない
- まず色や形を“感じる”
という姿勢です。
「よくわからないけれど、なんだか好き」
この受け止め方こそ抽象画の醍醐味です。
2. 最初に「色」を感じ取る
抽象画では色が大きな役割を持ちます。
鑑賞の最初は、意味よりも色の印象を受け取ってみましょう。
- あたたかい色が多い? → 明るい、前向き、エネルギッシュ
- ひんやりした色? → 静けさ、落ち着き、内省
- コントラストが強い? → 緊張感、動き、ドラマ
- 柔らかいトーン? → 優しさ、静けさ
色は感情に直結するため、「見た瞬間の気持ち」を大事にすることがポイントです。
3. 次に「形・ラインの動き」を見る
抽象画では、形そのものよりも、動き・リズム・方向性が印象を作ります。
- 形が丸い → やさしさ・調和
- 形が尖っている → 緊張感・鋭さ
- 線が流れるよう → 優雅さ・時間の流れ
- 線が荒々しい → 力強さ・感情の爆発
まるで音楽を聴くように、“画面の流れ”を味わうことで新しい発見があります。
4. 「マチエール(質感)」に目を向ける
抽象画の中には、絵具を厚く盛ったり、削ったり、重ねたり、と素材感を強く出した作品もあります。
これは「マチエール」と呼ばれるものです。
- 厚塗りの凹凸 → エネルギー・存在感
- 透明色の重なり → 深み・静かな広がり
- ざらつく質感 → 土、自然、身体性
- のびやかな筆跡 → 作者の動きが見える
抽象画の表面をじっと見ると、描いたときの呼吸や身体の動きまで想像できることがあります。
5. 少し離れて見る → 全体の“気配”をつかむ
抽象画は、近づきすぎると意味が分かりづらいことがあります。
数歩離れてみると、
- バランス
- 色のハーモニー
- 作品全体の空気感
- 画面のリズム
が見えてきます。
少し離れて “全体の雰囲気” を感じると、理解がぐっと深まります。
6. 感じたことに「自分の言葉」を添えてみる
鑑賞の最後に、心の中で次の質問をしてみてください。
- どんな気持ちになった?
- どんな場所を連想した?
- 目に留まった色は?
- 流れているようにも、止まっているようにも見える?
- この絵の“温度”はどう?
抽象画は、鑑賞者の感性が作品を完成させるアートです。
「正しい感想」はありません。
あなたの感じたことが、その作品だけの世界になります。

7. 作者の意図・タイトルを見るのは“最後に”がおすすめ
最初に作者の意図を読むと、その情報に引っぱられてしまい、自由に感じることが難しくなることがあります。
おすすめの順序は、
① まず自分の感性で見る
② 次にタイトルを見る
③ 最後に作者の言葉や解説を読む
という流れ。
そうすると、
「なるほど!だからこう感じたのか」
「タイトルと私の印象が違うのもおもしろい」
と、鑑賞の奥行きが深まります。
8. 抽象画は“答えを探さず、対話するアート”
抽象画の魅力は、見る人によって世界が変わることです。
同じ絵でも、
- 気分
- 心の状態
- 年齢
- 置かれた環境
によって、まったく違う感覚になることがあります。
つまり抽象画は、その時の自分を映す鏡のような存在なのです。
まとめ
抽象画を鑑賞するコツは、
- 正解を求めず“感じる”こと
- 色・形・動き・質感に目を向ける
- 距離を変えて見てみる
- 自分の言葉で感想をつける
- 最後に作者の意図を読む
という流れです。
抽象画は、見る人の心を自由にするアート。
ひとつの絵からいくつもの世界が生まれる、その奥深い魅力をぜひ楽しんでください。













