絵画の鑑賞方法|だれでも今日から使える「見る技術」

1. まずは「好き/気になる」ポイントを探す

鑑賞の最初の一歩は、感覚で見ることです。

  • どの色に目がいく?
  • 一番最初に心が動いた場所はどこ?
  • 何となく“好き”“気になる”“落ち着く”“不思議”…など直感は?

最初から意味や技法を考える必要はありません。
絵画はまず“感じるもの”。
この直感が、後の深い鑑賞につながります。

2. 構図に注目する(視線の流れを追う)

構図は、鑑賞体験の「地図」のようなもの。

よく使われる構図

  • 三角構図:安定・堂々とした印象
  • 黄金比構図:自然で調和した美しさ
  • 対角線構図:動き・スピード感
  • S字構図:優しさ・流れ・リズム感
  • 左右非対称(アシンメトリー):緊張感や独特のバランス

視線がどのように動くのかを追っていくと、作者の意図が見えてきます。
たとえば富士山の作品なら「三角構図の安定」「山頂へ導かれる視線」「空の余白」が特徴になります。

3. 色を読む(色彩は“言葉”である)

色は感情を操る大切な要素。

  • 暖色(赤・オレンジ・黄色):活力・情熱・温かさ
  • 寒色(青・緑):静けさ・冷たさ・安定
  • モノトーン:洗練・静謐・精神性
  • 補色の組み合わせ(青×オレンジなど):強い存在感、視覚的インパクト

「なぜこの色が使われているのか?」を考えると、作品の“心理”に近づけます。

4. タッチや質感を観察する

絵の表面には、作家の呼吸やリズムが残っています。

  • 筆跡が大胆 → 力強さ・感情の高まり
  • 塗りが滑らか → 静けさ・繊細さ
  • 厚塗り(インパスト) → エネルギー・物質感
  • レイヤーを重ねた透明感 → 奥行き・時間の積層

近づいて質感を見ると「こんなふうに描いていたのか」と発見が増えます。

5. 距離を変えて鑑賞する

同じ絵でも、距離によって“まったく別の作品”になります。

  • 遠くから:作品全体の構図・空気感
  • 中距離で:色の関係性・リズム
  • 近くで:筆跡・素材の質感・技法

特に抽象画や大型作品は、距離を変えるほど理解が深まります。

6. 物語・背景を知る(意味を見る)

鑑賞の後半では、絵の裏側にある物語を知っていきます。

  • 作者の時代背景
  • 制作時の心境
  • 作品が描かれた環境(旅・モデル・象徴など)
  • モチーフの意味(太陽=生命・希望/富士山=霊性・象徴性 など)

ただし、背景知識は“最後”でOK
先に知識を入れると、自分の感性が働かなくなるためです。

7. 自分にとって“どんな絵か”を言語化する

鑑賞の仕上げとして、自分の言葉で作品を語ると理解が深まります。

  • この絵の「一番好きなポイント」は?
  • どんな感情が動いた?
  • 家に飾るとしたら、どんな空間が合う?
  • 心の中にどんな余韻が残った?

鑑賞の答えはひとつではなく、すべて正解です。

まとめ

絵画鑑賞は、知識よりも“自分の心の動き”から始めるのがいちばん大切です。

  1. 感じる
  2. 見つめる
  3. 読み解く
  4. 言語化する

この4つのステップを意識すると、どんな作品でも深く、豊かに味わえるようになります。

ABOUT US
満園 和久
3歳の頃、今で言う絵画教室に通った。その絵の先生はお寺の住職さんであった。隣町のお寺で友達の3歳児とクレヨン画を学んだ。 それ以降も絵を描き続け、本格的に絵画を始めたのは30歳の頃。独学で油彩画を始め、その後すぐに絵画教室に通うことになる。10年ほどの間、絵画教室で学び、団体展などに出展する。 その後、KFSアートスクールで学び油彩画からアクリル画に転向しグループ展や公募展等に出品し続け現在に至る。 ここ20年程は、「太陽」「富士山」「天使」をテーマにして絵画を制作。 画歴は油彩を始めてから数えると35年になる。(2024年現在) 愛知県生まれ 愛知県在住 満園 和久 (Mitsuzono Kazuhisa)