〜絵画構成の基礎と応用〜
絵画の基礎でありながら混同されやすい「コンポジション」と「コンストラクション」。この記事では両者の違いと関係を初心者にもわかりやすく解説。構図と構造を理解することで、見せ方だけでなく説得力のある絵を描くための技術が身につきます。
1. はじめに:なぜこのテーマが重要なのか
「構図」と「構造」──言葉として似ていますが、絵画では全く違う役割を持ちます。
- コンポジション(Composition)は見た目の配置
- コンストラクション(Construction)は中身や骨組み
たとえるなら、
コンポジション=インテリアのレイアウト
コンストラクション=建物の柱・梁の設計図
どちらが欠けても美しい絵は成立しません。
コンポジションだけでは「見た目だけ」、コンストラクションだけでは「堅い設計図」で終わります。
この2つを正しく理解することは、“構図のうまさ”だけでなく“説得力ある表現”につながる大切な基礎です。
2. 「コンポジション」とは?
● 定義
コンポジション(Composition)とは、絵画・写真・映像などにおける視覚要素の配置・構成のこと。日本語では一般に「構図」と訳されます。
● コンポジションの要素
- 画面のレイアウト
- 余白と密度のバランス
- 視線誘導
- 形の大小・位置関係
- 黄金比・三角構図・S字構図などの数理的構造
● 目的
- 見る人の目を導く
- 主題を引き立たせる
- リズム・動き・安定感を作る
● 代表的な構図法
- 三角構図
- 黄金比構図
- S字構図
- 対角線構図
- 対称構図
- 三分割法
3. 「コンストラクション」とは?
● 定義
コンストラクション(Construction)とは、対象の立体構造・形の成り立ちを理解し、絵として組み立てることを指します。
● 日本語では?
- 構造
- 構築
- 構成体
- 立体構造
● コンストラクションが重視すること
- 立体としての理解
- 頭身・比率
- 骨格・パース
- 形のメカニズム
- 内部構造(人体なら骨格、物ならパーツ)
● 例
- 立方体を分解して描く練習
- 頭部を球体+平面でとらえる
- キャラクターを円柱と球で構成する
- 視点移動に応じて形態が変化する理解
4. コンポジションとコンストラクションの違い
| 項目 | コンポジション | コンストラクション |
|---|---|---|
| 意味 | 視覚的配置 | 構造・骨組みの理解 |
| 目的 | 見せ方の美しさ | 形の説得力・リアリティ |
| 視点 | 画面全体 | 個々の対象 |
| 位置 | 表層 | 内部 |
| 教える場 | 美術・デザイン | デッサン・造形・解剖学 |
| 関連分野 | 写真・広告・映像 | 彫刻・建築・工業デザイン |
5. 両者の関係性:制作プロセスでの役割
最も良い絵はこの2つが融合しています。
● 例:人物画
- コンストラクション → 骨格・パース・立体を押さえる
- コンポジション → 画面の中で魅力的に配置する
つまり、
「何をどう描くか」ではなく「どう見せるか+どう成立させるか」
この両方が揃って初めて“絵として強い”表現が成立します。
6. 有名作品で理解するコンポジションとコンストラクション
● レオナルド・ダ・ヴィンチ「モナ・リザ」
- コンポジション:三角構図
- コンストラクション:精密な頭部と胴体の立体構造
● ミケランジェロの素描
- コンストラクション重視:骨格と筋肉での構築

● シャガール
- コンポジション重視の幻想的配置
- コンストラクションは意図的に緩く操作
7. よくある誤解と落とし穴
- 構図だけ気にしても形が崩れる
- 立体だけリアルでも“絵として弱い”場合がある
- 写真をそのまま模写してもコンストラクションの理解にはならない
8. 制作に応用するための実践ステップ
STEP1:単純形状で構造をとらえる(コンストラクション)
● 目的
- 「うまく描く」前に、形を成立させる
- モチーフを立体として破綻なく扱える状態にする
● ここでやること
- ディテールは一切描かない
- 正確さより論理的な形の成立を優先
● 実践内容
- モチーフを単純形状に分解
- 球体(頭・果物・雲)
- 円柱(腕・脚・木・ボトル)
- 直方体(建物・箱・家具)
- パース・傾き・重心を確認
- 地面に対して立っているか
- 重心が不自然に浮いていないか
- 視点(俯瞰・仰角)が一貫しているか
- 内部構造を想定
- 人物なら骨格
- 建物なら柱・床
- 自然物なら成長方向や重力
● NG例
- 最初から輪郭線をなぞる
- 写真の形を「見えたまま」写す
- 影や模様を先に描く
👉 この段階が甘いと、
後工程でどれだけ整えても「違和感」が消えません。
STEP2:主役と余白のバランスを設計(コンポジション)
● 目的
- 「何を見せたい絵なのか」を明確にする
- 視線が迷わない画面を作る
● ここでやること
- 描写ではなく配置の設計
- 画面全体を一つの「設計図」として扱う
● 実践内容
- 主役を1つ決める
- 一番コントラストが強くなる場所
- 一番情報量を集中させる位置
- 視線が最初に到達してほしい点
- 主役の位置を決定
- 中央固定ではなく
- 三分割
- 三角構図
- 対角線
を検討
- 中央固定ではなく
- 余白を「意味ある空間」として配置
- 何も描かない部分も構成要素
- 詰めすぎは主役を弱くする
- 余白は「呼吸」と「間」を生む
● チェックポイント
- 主役が小さすぎないか
- 画面端に視線が逃げていないか
- 余白がただの空白になっていないか
👉 構図は感覚ではなく設計です。
STEP3:視線誘導・質感・光で仕上げる
● 目的
- コンポジションを「体験」に変える
- 見る人の目を自然に動かす
● ここでやること
- 情報量のコントロール
- 視線の流れを操作
① 視線誘導
- 明暗のコントラスト
- 線の向き
- 形の連続
- 色相・彩度の差
→ 主役 → 補助要素 → 余白
という順で視線が巡るのが理想。
② 質感の描き分け
- 主役:情報量多め
- 周辺:簡略化・ぼかし
同じ描写密度だと、
どこを見ればいいかわからない絵になります。
③ 光の設計
- 光源は1つに限定
- 主役に最も光が当たるよう設計
- 影で立体感と空間を強化
👉 光は「リアルさ」より
構成を強化する道具として使います。
STEP4:最終チェック(破綻潰し)
● 目的
- 無意識のズレ・違和感を排除
- 完成度を一段引き上げる
● チェック項目(実践用)
① 形の破綻チェック
- 左右反転して見る
- モノクロ表示で確認
- 目を細めてシルエット確認
② コンポジションチェック
- 主役は一瞬でわかるか
- 視線が画面外へ逃げないか
- 余白が機能しているか
③ 情報量チェック
- 描き込み過多な場所はないか
- 主役より目立つ脇役がないか
■ この4ステップの本質
この工程はセンスではなく「判断の積み重ね」です。
- STEP1:論理
- STEP2:設計
- STEP3:演出
- STEP4:検証
どれか一つ飛ばすと、「なんとなく上手そうだけど弱い絵」になります。
良い絵は、
「形が成立し、見せ方が設計され、視線が導かれ、違和感が除去されている」
この4段階を意識するだけで、再現性のある制作プロセスになります。
9. 学習に役立つトレーニング方法
- 立方体・球・円柱で物を描く
- 1分〜5分クロッキーで形を掴む
- 名画トレースで構図を分析
- 制作の前にサムネイルスケッチを描く
- 写真をモノクロで再構成
10. まとめ(要点整理)
- コンポジション=画面全体の見せ方
- コンストラクション=物の立体構造
- 両方が揃ってはじめて強い絵になる
- 上手い絵は「配置」と「構造」を同時に持つ
- 理解して描くことで表現の自由度が上がる












