アクリル絵の具とアクリルガッシュのミックスメディアについて

─透明と不透明の“かけ合わせ”が生み出す新しい表現の世界─

はじめに:アクリル+アクリルガッシュは最強の組み合わせ

どちらもアクリル樹脂をベースとした水性絵具であり、

  • 乾燥が速い
  • 耐水性が高い
  • 接着力が強い
    という共通点があります。

しかし 最大の違いは「透明性とマット性」 にあります。

種類アクリル絵の具アクリルガッシュ
質感透明〜半透明完全不透明(マット)
発色深みがあり重ねに強いはっきりくっきりした色面表現向き
乾燥後の変化若干色が濃くなる乾くと少し暗くなる
用途グラデーション・グレーズ・光の表現ベタ塗り・イラスト・デザイン・ロゴ

この性質を活かして 透明層+マット層のレイヤー構造 を作ることで、単色では出せない深い表現が可能になります。

ミックスメディアに向いている理由

● 透明と不透明を使い分けて視線を導ける

透明色…奥行き・空気感・光
不透明色…主題・ライン・重要箇所の強調

美術の基本原則である「視線誘導」に適しており、
同じアクリル系なので物理的な相性も良好です。

● 画材の乗りが安定している

油彩+アクリルのような剥離リスクが少なく、
ガッシュが下層でも上層でも使用できるのが大きな利点です。

● マット×グロスの質感対比を作れる

  • アクリルガッシュ→完全マット
  • アクリル絵具(特に透明色)→つやあり

この対比は光の反射をコントロールするため、
実物の作品が非常に映える仕上がりになります。

基本的な使い分け

1. 下地はアクリル絵の具(透明)

グラデーション・大気感・雰囲気作りに強い
→ 光の表現や背景に最適

2. 仕上げやラインはアクリルガッシュ(不透明)

ロゴ、模様、装飾、人物の目、強調点などに最適
→ ポップアートやデザイン画にも使われる理由

3. ハイライトはどちらも使えるが…

  • 透明系…光の滲みを表現できる
  • 不透明系…強い白・くっきりした映える光が作れる

ミックスメディアの具体的な制作プロセス(STEP解説)

STEP1:下地作り

ジェッソやモデリングペーストで質感を作る
(ターナー・リキテックス・ホルベインが定番)

STEP2:透明アクリルで薄塗り

薄い層で色を蓄積する「グレーズ」が効果的

STEP3:中層にガッシュで形を固める

ライン、パターン、色面、文字

STEP4:再び透明アクリルで調整

深みや色調バランスをコントロール

STEP5:最終仕上げ

ハイライト・テクスチャ・金属色など

ミックスメディアで注意すべきポイント

● 乾燥時間を守る

アクリルは速乾だが、表面だけ乾いて内部が湿っている場合がある
厚塗り時は最低30分〜数時間は確保したい

● 塗り重ね順序を意識する

不透明→透明の順で塗ると濁りやすい
透明→不透明の順が基本

● ニス選びに注意

ガッシュはニスで色が濃くなる、光沢が出る可能性あり
→ マット仕上げのニスが推奨(Liquitex、ターナーなど)

よく使われる応用技法

・グレーズ+マットの対比

幻想的な背景+くっきりとしたモチーフなど

・ドライブラシを併用

ガッシュのマット性と相性が良い

・スタンピング・ステンシル

ロゴや模様の強調に超有効

・ドリッピング+マットの組み合わせ

アクリル絵の具でドリップ → ガッシュで制御
抽象と秩序のコントラストが生まれる

ミックスメディアにおすすめの製品

● アクリル絵の具(透明)

  • リキテックス プロフェッショナル
  • ホルベイン アクリリックカラー
  • ターナー アクリルガッシュ透明色シリーズ

● アクリルガッシュ(不透明)

  • ターナー アクリルガッシュ
  • ホルベイン アクリルガッシュ
  • Liquitex Acrylic Gouache

● 補助メディウム

  • リキテックス マットメディウム
  • ターナー グロスメディウム
  • ホルベイン ジェッソ・ペースト類

ミックスメディア作品の販売向けポイント(STORES・BASE対策)

● 表現の差別化ポイントとして訴求できる

「透明とマットの重ねによる立体的な色彩表現」
「光の角度で色の見え方が変わる作品です」など

● 制作工程や使用画材をストーリーにする

→ オリジナル性・作家性の強化になる

● 作品説明文の例(100〜150文字)

透明アクリルとマットガッシュを重ねた、色と光の層が特徴のミックスメディア作品です。
光の角度によって見え方が変化し、奥行きを感じる彩りをお楽しみいただけます。

ミックスメディア作品の保護方法

  • 完全乾燥後にニス
  • マットニス or サテンニスを推奨
  • 額装時は作品面とアクリル板が触れないようにスペーサー必須
  • ガッシュ部分は剥離に注意 → ナイフや摩擦NG

まとめ:アクリル+ガッシュは“計算された自由”を可能にする技法

アクリル絵具とアクリルガッシュのミックスメディアは、

✔透明 × 不透明の対比
✔質感が選べる
✔順序を理解すれば失敗しにくい
✔販売・展示で差別化しやすい

という強力な利点があります。

単なる絵具の混合ではなく、レイヤー・順序・質感のコントロール こそが最大のポイントです。

アートは「色の科学」と「感性」の交差点です。
透明とマットをコントロールするということは、すなわち 光と影を設計する作業 とも言えます。

あなたの作品にも、ぜひこの“二種類の光”を取り入れてみてください。

ABOUT US
満園 和久
3歳の頃、今で言う絵画教室に通った。その絵の先生はお寺の住職さんであった。隣町のお寺で友達の3歳児とクレヨン画を学んだ。 それ以降も絵を描き続け、本格的に絵画を始めたのは30歳の頃。独学で油彩画を始め、その後すぐに絵画教室に通うことになる。10年ほどの間、絵画教室で学び、団体展などに出展する。 その後、KFSアートスクールで学び油彩画からアクリル画に転向しグループ展や公募展等に出品し続け現在に至る。 ここ20年程は、「太陽」「富士山」「天使」をテーマにして絵画を制作。 画歴は油彩を始めてから数えると35年になる。(2024年現在) 愛知県生まれ 愛知県在住 満園 和久 (Mitsuzono Kazuhisa)