アクリルガッシュとアクリル絵具の違いについて

アクリルガッシュとアクリル絵具は、どちらもアクリル樹脂をバインダー(展色剤)に用いた絵具です。

顔料とアクリル樹脂(アクリル・ポリマー・エマルジョン)を混ぜ合わせて作られた絵具がアクリル絵具、アクリルガッシュです。

この記事では、両者の特徴、用途、メリット・デメリットについて詳しく解説し、どちらを選ぶべきかの指針を提供します。

アクリルガッシュの特徴

アクリルガッシュは、不透明な仕上がりが特徴の絵具です。一般的には「ガッシュ」と呼ばれることもありますが、アクリル樹脂を基にしているため、乾燥すると耐水性を持つ点が従来のガッシュと異なります。

不透明度と発色

アクリルガッシュは不透明度が高く、下地の色を完全に覆い隠すことができます。

そのため、鮮やかな発色を保つことができ、特にポスターやイラストなどでの使用に適しています。

乾燥後の仕上がり

乾燥後はマットな質感になり、光沢が抑えられます。これにより、反射を防ぎ、色の一貫性を保つことができます。

さらに、耐水性があるため、上から別のレイヤーを重ねても色がにじむことがありません。

速乾性と耐久性

アクリルガッシュは乾燥が非常に速く、短時間で次の作業に移ることができます。

また、乾燥後の耐久性も高く、色あせやひび割れが起こりにくいため、長期間にわたって作品の鮮やかさを保つことができます。

厚塗りによるひび割れのリスク

アクリルガッシュは、一度に厚塗りするとひび割れが生じることがあります。

これは、絵具の成分に柔軟性を保つための添加剤が少ないためです。

そのため、厚く塗る場合は、薄く塗り重ねる方法や、モデリングペーストを混ぜる方法が推奨されます。

アクリル絵具の特徴

一方、アクリル絵具は透明度が高く、薄く塗ることで下地の色を活かした表現が可能です。

また、厚塗りやテクスチャーの表現にも適しています。

透明度と発色

アクリル絵具は透明度があり、色を重ねることで微妙なニュアンスや深みを出すことができます。

そのため、風景画や抽象画など、複雑な色彩表現が求められる作品に向いています。

乾燥後の仕上がり

アクリル絵具は乾燥後に光沢が残ることが多く、色が鮮やかに見えます。耐水性もあり、乾燥後に上から水をかけても色が流れないため、長期保存にも適しています。

多様な技法への対応

アクリル絵具は、薄塗りやグレーズ(薄い色の層を重ねる技法)、インパスト(厚塗りによる立体感のある表現)など、多様な技法に対応できます。

これにより、画家はさまざまな質感や効果を表現することができます。

アクリルガッシュとアクリル絵具の用途の違い

用途によって、アクリルガッシュとアクリル絵具のどちらが適しているかが変わります。

それぞれの用途に合わせた選び方を紹介します。

イラストやポスター

イラストやポスターなど、鮮やかな色を一発で出したい場合にはアクリルガッシュが適しています。

不透明でマットな仕上がりが、視覚的なインパクトを強調します。

広告やサインボードなど、目立たせたいデザインには最適です。

風景画や抽象画

風景画や抽象画など、複雑な色彩表現や透明感を求める作品にはアクリル絵具が適しています。

透明度を活かして色を重ねることで、深みのある表現が可能です。

自然な風合いや光の表現を追求するアーティストには欠かせない素材です。

デザインや模型製作

デザインや模型製作では、アクリルガッシュの不透明性と耐水性が役立ちます。細部の描写や色の修正がしやすく、安定した発色を保つことができます。

建築模型やプロダクトデザインなど、正確な色表現が求められる場合にも適しています。

教育現場での使用

アクリルガッシュは教育現場でも広く使用されています。不透明で扱いやすく、乾燥も早いため、子供たちが自分の作品を早く完成させることができます。

安全性が高い点も教育現場での使用に適しています。

アクリルガッシュとアクリル絵具のメリットとデメリット

アクリルガッシュのメリット

  • 高い遮蔽力(不透明)でムラができにくく鮮やかな発色
  • 乾燥後はマット(つや消し)な質感で反射を防ぐ
  • 耐水性があり、重ね塗りが可能
  • 速乾性が高く、作業効率が良い

アクリルガッシュのデメリット

  • 透明感のある表現には不向き
  • 光沢がないため、色がくすんで見えることもある
  • バインダーの複合量が少ないため、あまり厚塗りのしすぎはひび割れの危険性がある
(※私は20年ほどアクリルガッシュを使用していますが普通の絵画描写ではひび割れは起きません。アクリルガッシュ20年の経験ですが耐久性も問題ありません。知り合いの画家にも通常の使用で剥離やひび割れなどが起きたことを聞いたことはありません。ただ、メディウムを使わずに絵具だけで一度に厚塗りするとか、キャンバスを木枠から外して丸めるなど使い方を誤ると、ひび割れが起きる可能性は大きいようです。)

アクリル絵具のメリット

  • 透明度があり、複雑な色彩表現が可能
  • 乾燥後の光沢で色が鮮やかに見える
  • 耐水性があり、長期保存に適している
  • 多様な技法に対応できる

アクリル絵具のデメリット

  • 不透明度が低いため、下地の影響を受けやすい
  • 光沢が反射するため、見え方が変わることがある
  • 乾燥が速く、作業時間が制限されることがある

まとめ

アクリルガッシュとアクリル絵具は、それぞれ異なる特徴を持ち、用途によって使い分けることが重要です。

鮮やかな色を一発で出したい場合や、マットな仕上がりを求める場合にはアクリルガッシュが適しています。

一方、複雑な色彩表現や透明感を活かしたい場合にはアクリル絵具が適しています。

自身の制作スタイルや作品の目的に合わせて、最適な絵具を選びましょう。

また、両方の絵具を組み合わせることで、さらに多様な表現が可能となります。

例えば、背景にアクリル絵具を使用し、細部やハイライトにアクリルガッシュを使うことで、独自の質感と深みを持つ作品を作り上げることができます。

クリエイティブなアプローチを試みることで、新たな表現の可能性が広がるでしょう。

ABOUT US
満園 和久
3歳の頃、今で言う絵画教室に通った。その絵の先生はお寺の住職さんであった。隣町のお寺で友達の3歳児とクレヨン画を学んだ。 それ以降も絵を描き続け、本格的に絵画を始めたのは30歳の頃。独学で油彩画を始め、その後すぐに絵画教室に通うことになる。10年ほどの間、絵画教室で学び、団体展などに出展する。 その後、KFSアートスクールで学び油彩画からアクリル画に転向しグループ展や公募展等に出品し続け現在に至る。 ここ20年程は、「太陽」「富士山」「天使」をテーマにして絵画を制作。 画歴は油彩を始めてから数えると35年になる。(2024年現在) 愛知県生まれ 愛知県在住 満園 和久 (Mitsuzono Kazuhisa)