初心者にもよくわかる アクリルガッシュでの絵画の描き方 

はじめに

アクリルガッシュは、アクリル絵の具と水彩絵の具の特徴を兼ね備えた画材です。

その不透明な仕上がりと速乾性が、多くのアーティストに支持されています。この記事では、アクリルガッシュの基本的な使い方から描き方までを、初心者にも分かりやすく解説します。

1. アクリルガッシュの基本

アクリルガッシュはアクリル絵の具の一種ですが、マット(つや消し)な仕上がりが特徴です。

乾くと耐水性になり、上から重ね塗りができるので、絵画の幅が広がります。

また、色の発色が良く、鮮やかな色彩を保つことができます。

このため、ポスターやイラスト、デザイン画など、様々な用途に適しています。

2. 必要な道具

  • アクリルガッシュ

3. 準備

絵を描き始める前に、全ての道具を準備しましょう。

パレットにアクリルガッシュを適量出し、水を入れたカップを用意します。

筆は事前に軽く湿らせておくと、絵の具が均一に広がります。

また、キャンバスや紙など支持体をしっかりと固定して、動かないように準備します。

作業環境を整えることで、スムーズに絵を描くことができます。

4. 色の混ぜ方

アクリルガッシュの特徴の一つは、色が混ざりやすいことです。

パレット上で色を混ぜる際は、少しずつ絵の具を加えて好みの色を作りましょう。

混色の基本として、赤・青・黄の三原色を基に色を作ると多彩な色を表現できます。

また、白を混ぜることでパステル調の柔らかい色合いに、黒を混ぜることでシックで落ち着いた色合いに調整できます。

5. 下描き

まず、軽く鉛筆で下描きをします。

このステップでは、構図や全体のバランスを確認することが重要です。

下描きは軽く描くことで、後から消しゴムで修正しやすくなります。

下描きの際には、描きたい対象物の輪郭を大まかに捉えることがポイントです。

細かいディテールは後から絵の具で表現できるため、最初はシンプルな線で描くことを心がけましょう。

また、下描きを行う際には、参考となる写真や実物を用意すると良いです。

観察力を高めるために、対象物の形や陰影、質感をじっくりと観察し、それを元に下描きを行います。

下描きが完成したら、鉛筆の線が消えないように注意しながら、次のステップに進みます。

6. 塗り方の基本

アクリルガッシュは速乾性があるため、素早く塗ることが求められます。

まずは大まかな色を薄く塗り、段階的に濃くしていきます。

この時、薄く塗ることで色の重なりが綺麗に表現できます。

具体的には、最初に絵全体の基本色を薄く塗り、乾かしてから次の色を重ねます。

例えば、風景画を描く場合、空や地面などの広い範囲から塗り始めます。

この際、薄い色から始めることで、後から重ねる色が鮮やかに映えます。

大まかな色が塗り終わったら、次に影や明るい部分を細かく塗り分けます。

影を描くことで立体感が増し、明るい部分を強調することで絵が生き生きとします。

7. グラデーションの作り方

グラデーションを作るには、異なる色を少しずつ重ねる方法があります。

まず一色を塗り、その上に徐々に別の色を重ねることで、自然なグラデーションが生まれます。

水を使ってぼかす技法も効果的です。

水を多めに含ませた筆で色をぼかし、滑らかな色の移り変わりを作り出します。

グラデーションを作る際には、色を混ぜすぎないように注意することが大切です。

また、グラデーションを使って空や海の表現をする場合、色の移り変わりが自然に見えるように心がけます。

例えば、夕焼けの空を描く場合、赤からオレンジ、黄色へと滑らかに変わるように塗ることで、リアルな風景が表現できます。

8. 細部の描き込み

大まかな色が決まったら、細部を描き込みます。

細い筆を使って細部のディテールを描き、絵に深みを持たせます。

このステップでは、細かい線や点を使って質感を表現すると良いでしょう。

また、色の重なりや陰影を工夫して、立体感を持たせることもポイントです。

例えば、動物の毛並みや葉の繊細な部分など、細かい部分を丁寧に描き込むことで、絵全体が引き締まります。

9. 重ね塗りのテクニック

アクリルガッシュの強みの一つは、乾いた後に耐水性になるため、重ね塗りが可能であることです。

これを活用して、複雑な色合いやテクスチャを表現することができます。

例えば、背景を塗った後に前景を描く場合、背景の色が前景に影響を与えることなく、クリアに表現できます。

重ね塗りのテクニックをマスターするためには、色の透明度や厚みを調整することが重要です。

薄く塗ることで透明感を出し、厚く塗ることで不透明な層を作り出します。

例えば、花を描く際には、花びらの透明感を出すために薄く塗り、中心部分の影を強調するために厚く塗ります。

また、色の重ね塗りによって新しい色を作り出すこともできます。

例えば、青の上に黄色を重ねると緑が生まれます。

このように、重ね塗りを活用することで、パレットにはない複雑な色合いを表現できます。

10. 乾燥と仕上げ

アクリルガッシュは速乾性があり、短時間で乾燥します。乾燥後に再度色を重ねたり、細部を描き足したりすることで、絵を完成させます。

最後に全体を見渡し、修正が必要な部分をチェックします。

アクリルガッシュは乾くと修正が難しいため、細かい調整は慎重に行いましょう。

仕上げにトップコートなど透明なアクリルメディウムを塗ると、絵の保護と艶出しができます。

11. 保管方法

完成した絵画は、直射日光や高温多湿を避けて保管することが大切です。

また、埃や汚れから守るために、額に入れるか、保護フィルムをかけると良いでしょう。

長期間保存する場合は、アクリルメディウム(トップコート・バーニッシュなど)で表面を保護することもおすすめです。

12. 応用技法

アクリルガッシュを使った応用技法には、ドライブラシやスタンピング、スパッタリング、スクラッチングなどがあります。

ドライブラシ

筆にほとんど絵の具を付けずに、キャンバスに軽く擦るようにして描く技法です。

スタンピング

スポンジや布を使って、独特のテクスチャを表現します。例えば、スポンジを使って絵の具を叩くように塗ることで、雲のような柔らかい効果を出すことができます。

布を使って描くと、粗いテクスチャが表現でき、背景や大きな面積の塗りに適しています。

スパッタリング

絵の具をはじくようにして、小さな点や斑点を作り出します。

これにより、砂や星空、葉っぱの上に溜まった露などの表現ができます。

スパッタリングを行うには、絵の具を水で薄め、硬い筆や歯ブラシを使って絵の具を飛ばすようにします。

飛ばし方の強弱を調整することで、点の大きさや密度をコントロールできます。

スクラッチング技法

だ乾いていない絵の具の表面を削ることで、下の色や紙の質感を露出させる技法です。

これにより、細かい線や複雑なテクスチャを作り出すことができます。

尖った道具やナイフを使って削ることで、細かいディテールを表現することが可能です。

13. コツとヒント

初心者がアクリルガッシュを使う際のコツとして、以下のポイントがあります。

少量の絵の具を使う

アクリルガッシュは乾燥が早いため、必要な分だけパレットに出すことが大切です。

余分な絵の具はすぐに乾いてしまうため、こまめに補充しながら作業を進めましょう。

筆の洗浄を怠らない

使用後の筆はすぐに洗うことが重要です。

乾いた絵の具は取り除くのが難しくなり、筆が劣化してしまいます。

特に色を変える際には、筆をしっかり洗い、異なる色が混ざらないように注意しましょう。

絵の具が乾いた後の修正

アクリルガッシュは乾くと耐水性になるため、乾いた後の修正は慎重に行います。

薄く重ね塗りをして色を調整する方法が有効です。

また、修正が必要な部分は、最初から色を重ねるのではなく、一度白で塗り直してから新たに色を塗ると、綺麗に修正できます。

色の重なりを意識する

アクリルガッシュの特性を活かし、色の重なりを意識して塗ることで、透明感や深みを表現することができます。

例えば、背景を薄く塗り、その上に透明感のある色を重ねることで、奥行きのある風景を作り出すことができます。

試し塗りを行う

新しい色や技法を試す際には、別の紙やキャンバスで試し塗りを行うと良いでしょう。

これにより、思い通りの色や効果が得られるか確認できます。

特に、色の混ざり具合や乾燥後の発色を確認するために、試し塗りは欠かせません。

作業環境の整備

快適な作業環境を整えることで、集中して絵を描くことができます。

明るい照明や適切な湿度、風通しの良い場所で作業することを心がけましょう。

また、作業台や椅子の高さを調整し、長時間の作業でも疲れにくい姿勢を保つことが大切です。

練習と継続

アクリルガッシュの技法や特性を習得するには、繰り返しの練習が必要です。

最初は思い通りに描けないこともあるかもしれませんが、継続して練習することで技術が向上します。

自分のペースで楽しみながら取り組むことが、上達への近道です。

まとめ

アクリルガッシュは、初心者にも扱いやすい画材ですが、その特性を理解し、基本的な使い方を習得することで、より自由な表現が可能になります。

この記事を参考に、アクリルガッシュでの絵画を楽しんでください。

アクリルガッシュの特性を活かして、自分だけのオリジナル作品を作り上げる喜びを体験してみてください。

ABOUT US
満園 和久
3歳の頃、今で言う絵画教室に通った。その絵の先生はお寺の住職さんであった。隣町のお寺で友達の3歳児とクレヨン画を学んだ。 それ以降も絵を描き続け、本格的に絵画を始めたのは30歳の頃。独学で油彩画を始め、その後すぐに絵画教室に通うことになる。10年ほどの間、絵画教室で学び、団体展などに出展する。 その後、KFSアートスクールで学び油彩画からアクリル画に転向しグループ展や公募展等に出品し続け現在に至る。 ここ20年程は、「太陽」「富士山」「天使」をテーマにして絵画を制作。 画歴は油彩を始めてから数えると35年になる。(2024年現在) 愛知県生まれ 愛知県在住 満園 和久 (Mitsuzono Kazuhisa)