鳥瞰図と虫瞰図の使い分け:視点を変えて作品に奥行きを与える技法

アート作品やデザイン、建築パースなどで頻繁に用いられる「鳥瞰図(ちょうかんず)」と「虫瞰図(ちゅうかんず)」という表現技法。この二つは視点の違いにより、作品の印象や情報の伝わり方を大きく左右します。本記事では、鳥瞰図と虫瞰図の特徴や具体的な使い分け、効果的な活用方法について詳しく解説します。視点の選び方ひとつで、作品が劇的に変化する可能性があるのです。

鳥瞰図とは?高所からの広がりある視点

鳥瞰図(bird’s-eye view)とは、まるで空を飛ぶ鳥のように、上空から地上を見下ろした視点で描かれる図や構図のことです。俯瞰(ふかん)構図とも呼ばれ、風景画や地図、都市計画図、建築模型などでも頻繁に使用されます。

鳥瞰図の特徴

  • 広い範囲を一望できる:風景全体を捉えられるため、空間的な構造やスケール感を伝えるのに適しています。
  • 全体の構成を明示しやすい:観察者が空間内の要素を把握しやすく、設計図やマップなどにも多用されます。
  • 冷静で客観的な印象:距離を感じさせる構図のため、感情よりも情報を整理・伝達するのに向いています。

鳥瞰図が活きる場面

  • 都市や自然のパノラマ風景の描写
  • 建築物や空間デザインの全体把握
  • マップやインフォグラフィックの作成
  • 絵本やイラストにおけるストーリーの導入

虫瞰図とは?見上げるような迫力ある視点

虫瞰図(worm’s-eye view)は、地面にいる虫のような低い視点から、対象物を見上げる構図のことです。見上げ構図とも呼ばれ、人物や建築物などのスケールを強調するのに適しています。

虫瞰図の特徴

  • 迫力や臨場感がある:下から見上げる視点により、対象物が巨大に見え、印象的な表現になります。
  • 主観的で感情的な構図:観察者の視線と感情が一致しやすく、感動や畏怖、憧れといった心理的な効果を与えます。
  • 高さや力強さの強調:キャラクターや建築物に威厳や重厚感を与えるために用いられます。

虫瞰図が活きる場面

  • ヒーローや人物の登場シーンにインパクトを持たせたい時
  • 建物や塔、山などの高さを強調したい時
  • 幼少の視点や小動物の目線から世界を描写したい時
  • ファンタジー作品やコンセプトアートにおけるドラマチックな演出

鳥瞰図と虫瞰図の具体的な使い分け

伝えたい「印象」や「感情」で使い分ける

  • 客観的に情報を見せたい:鳥瞰図
  • 感情やドラマ性を出したい:虫瞰図

たとえば、都市の構造を紹介したいときは鳥瞰図が適していますが、高層ビルに圧倒される人間の視点を描くなら虫瞰図が効果的です。

2. 観察者の視点と心理を意識する

視点はそのまま、観る側の感情に直結します。鳥瞰図では「支配的」「冷静」「俯瞰的」な感情が伝わりやすく、虫瞰図では「畏怖」「感動」「驚き」といった感情をダイレクトに届けられます。

3. 絵のテーマやストーリーに沿って選ぶ

  • ストーリーの序盤:鳥瞰図で全体の世界観を提示
  • クライマックス:虫瞰図でドラマチックな迫力を表現

絵本や映画、マンガなどでは、場面ごとに視点を使い分けることで、ストーリー性にリズムと奥行きを持たせることができます。

アート制作における実践的な活用法

スケッチや構図の段階で視点を検討する

構図のラフを描く段階で、鳥瞰・虫瞰どちらがより作品の主題を伝えやすいかを検討することが大切です。時には両方を比較してみることで、より強い構図を選び取ることができます。

視点の切り替えで作品に動きを加える

1枚の作品でも、視点を切り替えることで空間にリズムや変化が生まれます。複数のキャラクターや物語を描く際には、鳥瞰図で全体の場面を示し、虫瞰図で特定の瞬間を強調するという構成も有効です。

デジタルアートとの相性も良好

デジタルツールでは視点の変更も簡単に行えるため、3Dモデルやパースのアタリを活用して鳥瞰図や虫瞰図の構図を試すことも可能です。パースを調整しながら、画面に最適な臨場感を加えましょう。

著作権と視点の構図における注意点

鳥瞰図や虫瞰図は一般的な構図であり、著作権で保護されるような独自表現には該当しません。しかし、他者の作品と酷似した構図やアングルを模倣する場合には注意が必要です。特に、写真や既存のアート作品を参考にする際は、

  • 商用利用の可否
  • クレジットの有無
  • 利用ガイドラインの遵守

などを確認することが重要です。

自分の視点で観察し、自身の経験や物語性を加えることで、著作権的にも独自性の高いアートが生まれます。

鳥瞰図・虫瞰図を活かした有名作品例(参考)

  • 鳥瞰図の例:葛飾北斎「冨嶽三十六景」シリーズには、遠景を俯瞰で描く構図が多く登場します。
  • 虫瞰図の例:映画『シティ・オブ・ゴッド』では、貧民街の高層ビルを見上げる虫瞰カットが印象的です。
  • アニメ作品:スタジオジブリ作品では、鳥瞰と虫瞰を巧みに使い分け、視覚的な物語性を高めています。

まとめ:視点を操ることで、作品はより深く豊かになる

鳥瞰図と虫瞰図は、単なる技術や構図ではなく、観る人の心に訴えかける「視点の力」を持っています。情報を伝える、感情を揺さぶる、世界観を広げる――それぞれの役割を理解し、意図的に使い分けることで、作品の質は飛躍的に向上します。

あなたの作品に「どの視点」が最もふさわしいか。次に筆を取るとき、その問いから始めてみてはいかがでしょうか。

ABOUT US
満園 和久
3歳の頃、今で言う絵画教室に通った。その絵の先生はお寺の住職さんであった。隣町のお寺で友達の3歳児とクレヨン画を学んだ。 それ以降も絵を描き続け、本格的に絵画を始めたのは30歳の頃。独学で油彩画を始め、その後すぐに絵画教室に通うことになる。10年ほどの間、絵画教室で学び、団体展などに出展する。 その後、KFSアートスクールで学び油彩画からアクリル画に転向しグループ展や公募展等に出品し続け現在に至る。 ここ20年程は、「太陽」「富士山」「天使」をテーマにして絵画を制作。 画歴は油彩を始めてから数えると35年になる。(2024年現在) 愛知県生まれ 愛知県在住 満園 和久 (Mitsuzono Kazuhisa)