色選びのコツやマット仕上げを活かすテクニック解説

作品づくりにおいて「色選び」は、感情やメッセージを伝えるうえで非常に重要な要素です。

そして、その色をどう仕上げるかも同じくらい大切です。特に「マット仕上げ(艶消し)」は、光の反射を抑え、作品の質感や色の深みを際立たせる効果があります。

この記事では、色選びの基本的なコツマット仕上げを活かすための具体的なテクニックについて、初心者の方から経験者まで参考になるよう詳しく解説します。

✅ 色選びの基本的な考え方

1. 感情やテーマに合わせて色を選ぶ

色には心理的な影響があります。以下は代表的な色とそのイメージです:

  • :情熱・力強さ・エネルギー
  • :冷静・誠実・静けさ
  • 黄色:希望・喜び・活力
  • :安心感・自然・調和
  • :神秘・高貴・創造性
  • :純粋・静寂・余白
  • :重厚・静けさ・厳かさ

作品のテーマが「癒し」なら、緑や青を基調に、柔らかい中間色を配置することで調和の取れた印象を与えられます。

2. 色相・彩度・明度のバランスを意識する

  • 色相(ヒュー):赤・青・緑などの色みの違い
  • 彩度(サチュレーション):鮮やかさの度合い
  • 明度(バリュー):明るさのレベル

これらを意識することで、色のトーンがまとまり、落ち着きのある配色が可能になります。特にマット仕上げでは「彩度と明度」のコントロールが鍵となります。

3. カラーパレットを事前に決める

無計画に色を重ねると、まとまりのない印象になりがちです。そこでおすすめなのが、3〜5色程度のカラーパレットを先に決めておくこと。

たとえば:

  • メインカラー(主役)
  • サブカラー(補助)
  • アクセントカラー(締め色)

のように役割を持たせると、作品全体の統一感が生まれます。

✅ マット仕上げとは?その特徴と魅力

マット仕上げとは、表面に光沢を持たない「艶消し」の状態を指します。特にアクリルガッシュではマットな絵肌になります。

マット仕上げの主な特徴:

  • 光を反射しないため、落ち着いた雰囲気
  • 表面がなめらかで、繊細な色表現に向く
  • 観賞時に角度を問わず、色の見え方が安定
  • 顔料の深みや重なりをしっかり感じ取れる

✅ マット仕上げを活かすテクニック5選

1. 明度差を活かして立体感を出す

マットな表面は光の陰影による立体感が出にくいため、明度の差を意識して描き分けるのが効果的です。例えば、肌のグラデーションや布の質感なども、明度だけで陰影を表現するよう心がけましょう。

2. マット用メディウムを活用する

アクリル絵具にマットメディウムを混ぜることで、色の彩度を維持したままマットな質感に仕上げられます。グロス(ツヤあり)とのバランスを取りたい場合は、マットとグロスを混ぜる割合を調整して中間仕上げも可能です。

3. ニスやフィキサチーフの選び方で仕上がりを調整

作品の保護としてスプレーニスを使う場合、「マットタイプ」のニスを選ぶことで、色味を保ちつつ光沢を抑えることができます。

おすすめのニス種類:

  • マットニス(つや消し)
  • サテンニス(半光沢)
  • グロスニス(光沢)(部分使い推奨)

【注意】水彩画や色鉛筆画に使う場合は、専用のフィキサチーフ(定着剤)を使いましょう。

4. 紙・キャンバスの素材にもこだわる

マットな質感を活かしたい場合、マット紙・厚手水彩紙・ベルベット調キャンバスなどの艶を抑えた素材がおすすめです。

特にジクレープリントを制作する場合も、光沢紙よりマット紙やファインアートペーパーの方が、落ち着いた雰囲気を再現しやすくなります。

5. ドライブラシ・スポンジ技法でマット感を強調

絵具を乾いた筆でかすれさせる「ドライブラシ」や、スポンジ・布を使ったテクスチャー技法は、マット仕上げとの相性が抜群。重ねることで繊細な色の濃淡や層が表現でき、マット特有の柔らかい印象を深めます。

✅ こんな作品にマット仕上げはおすすめ

  • 抽象画:色と形のバランスが強調されやすい
  • 詩的な風景画・幻想的な作品:しっとりとした世界観を演出
  • アートプリント(ジクレー):紙質や表面処理の選択で印象が大きく変わる
  • インテリアアート:自然光や照明による反射を防ぎやすい

✅ 色選びとマット仕上げの組み合わせアイデア

カラーパレット仕上げタイプ印象
青×白×グレー完全マット静寂・洗練された都会的
ピンク×茶×ベージュマット+ドライブラシ温かみ・優しさ
黒×赤×金マット+部分グロス高級感・力強さ
緑×黄×クリームサテンマット自然・柔らかい日差しの印象

✅ まとめ

色選びとマット仕上げは、作品の世界観や印象を決定づける非常に重要な要素です。

どの色をどう組み合わせるか、どのような質感で仕上げるかによって、見る人が受け取るメッセージは大きく変わります。

特にマット仕上げは、光の反射を抑えることで色の深みやニュアンスをより豊かに伝えることができ、静けさ・繊細さ・詩的な雰囲気を強調したい場面に最適です。

自然な明暗、奥行き、優しさのある表現を目指すとき、マットな質感を味方にすることで、作品はより“語りかける存在”へと進化します。

迷いがちな色選びも、パレット設計や仕上げ方に少しこだわるだけで、あなたのアートはぐっと魅力的になります。

色彩と質感の力を活かし、より深く心に響く作品づくりを目指してみましょう。

ABOUT US
満園 和久
3歳の頃、今で言う絵画教室に通った。その絵の先生はお寺の住職さんであった。隣町のお寺で友達の3歳児とクレヨン画を学んだ。 それ以降も絵を描き続け、本格的に絵画を始めたのは30歳の頃。独学で油彩画を始め、その後すぐに絵画教室に通うことになる。10年ほどの間、絵画教室で学び、団体展などに出展する。 その後、KFSアートスクールで学び油彩画からアクリル画に転向しグループ展や公募展等に出品し続け現在に至る。 ここ20年程は、「太陽」「富士山」「天使」をテーマにして絵画を制作。 画歴は油彩を始めてから数えると35年になる。(2024年現在) 愛知県生まれ 愛知県在住 満園 和久 (Mitsuzono Kazuhisa)