同じモチーフを描いているので、なぜか「毎回似た雰囲気になる」「新鮮味が出ない」「手癖が抜けない」。
そんな悩みを一気にほどく練習が、“モチーフを変えずに、構図だけを変えるトレーニング”です。
この練習の良さはシンプルです。モチーフを変えないので迷いが減り、代わりに“画面設計(構図)”だけに集中できる。
結果として、絵の完成度を決める要素のひとつである「見せ方」が、短期間で強くなります。
この記事では、構図を変える練習を「なぜ効くのか」から「具体的な手順」「上達のチェック項目」まで、ステップバイステップで整理して解説します。
なぜ「モチーフ固定・構図変更」が上達に効くのか
1)原因と結果がハッキリする(上達の因果が見える)
モチーフを変えると、難しさの原因が分散します。形が難しいのか、質感なのか、構図なのかが曖昧になる。
一方、モチーフ固定なら、変数は「構図」だけ。
結果が変わった理由=構図の影響だと特定しやすく、改善が速いです。
2)“手癖の構図”を可視化できる
人は無意識に、楽な配置(中央配置・水平線の固定・同じ余白)を繰り返します。
構図だけを変える練習をすると、「自分がいつもやっている型」が浮き彫りになります。
手癖が見えると、初めて外せます。
3)作品の説得力が「描写」だけに依存しなくなる
描写が上手くても、視線誘導や余白設計が弱いと「惜しい絵」になりがちです。
構図トレで得られるのは、描写力とは別の武器、つまり
“見せる力(鑑賞体験を設計する力)”です。
このトレーニングのゴール設定(最初に決めると迷わない)
練習に入る前に、ゴールを3つに絞ると効果が上がります。
- 視線誘導:見る人の目が気持ちよく動くか
- 主役の強さ:何が主役か一瞬で伝わるか
- 余白の質:空間が「意味のある静けさ」になっているか
この3点を、構図変更のたびにチェックします。
準備するもの(アナログでもデジタルでもOK)
- 同じモチーフ写真(自分で撮影したもの推奨:著作権配慮)
- 例:自分の部屋の花瓶、果物、マグカップ、石、貝殻、観葉植物など
- スケッチブック(A4〜B5)またはタブレット
- 5cm四方くらいの「窓枠(ビューファインダー)」
- 厚紙をくり抜くだけでOK
- タイマー(1案5〜10分で回すと良い)
※ネット画像をそのまま使う場合は権利問題が発生しやすいので、自分で撮影した写真が最も安全です。
ステップバイステップ:構図だけを変える練習手順
Step1:モチーフを1つに固定する(動かさない)
まずはモチーフを決めたら位置も光も固定します。
ここで動かすと、構図以外の要素が混ざります。
- モチーフ:花瓶+花 など
- 光:窓光 or ライト
- 背景:白布などシンプル
「構図だけ変える」ために、条件は固定します。
Step2:3×3の小サムネ(9案)を作る
いきなり大きく描くより、小さく数を作る方が効果的です。
A4に3×3で枠を引き、1枠に1構図。1案5分でもOK。
この時点では描き込み禁止。
やるのは「配置」「比率」「余白」「視線の流れ」だけです。
Step3:構図を変えるための“強制ルール”を使う
手癖を壊すには「自分の好みで考えない」ことが大事です。
そこで、強制ルールを使って構図を量産します。
以下、すぐ使えるルールを提示します。
構図変更のアイデア20選(モチーフ固定でも画面が変わる)
A:位置だけ変える(最も即効性)
- 主役を中央 → 左上へ
- 主役を中央 → 右下へ
- 画面端ギリギリに寄せる(大胆トリミング)
- 主役を画面外にはみ出させる(切る勇気)
- 主役を小さくし、余白を大きく取る
狙い: 余白の意味が変わり、視線誘導が変わります。
B:サイズ(スケール)だけ変える
- 主役を巨大にして画面の8割を占める
- 主役を豆粒サイズにして空間を主役にする
- 主役は同じ大きさ、背景の情報量を減らす(静けさ)
- 主役は同じ大きさ、背景に大きな形(影・壁面)を作る
狙い: “存在感”は描写だけでなく比率で決まる。
C:視点(アングル)だけ変える
- 真横 → 俯瞰(上から)
- 真横 → あおり(下から)
- 視点を少し斜めにして奥行きを作る
- 「机の端」を入れて前景を作る
狙い: 同じ物でも、視点でストーリーが変わります。
D:フレーム形を変える(縦横比の力)
- 横長(落ち着き)
- 縦長(上昇感・祈り・伸び)
- 正方形(象徴性・アイコン感)
- 細長いパノラマ(間・時間)
狙い: 画面比率は“感情”に直結します。
E:流れ(動線)を設計する
- 斜め構図(対角線で動きを出す)
- S字の流れを作る(曲線の誘導)
- 三角構図で安定させる(落ち着き・王道)
狙い: 見る人の目を「迷子」にしない。
上達が速い人がやっている“構図の採点表”
9案できたら、各案を10点満点で採点します。
項目は3つで十分です。
- 主役が一瞬でわかる:0〜10
- 視線が気持ちよく流れる:0〜10
- 余白が作品の一部になっている:0〜10
合計点が高い上位2案を「清書候補」にします。
点が低い案は失敗ではなく、“避けるべき手癖”の資料になります。
ありがちな失敗と対処(原因→対策で整理)
失敗1:全部同じに見える
原因: 主役位置が少ししか動いていない/トリミングが弱い
対策: 「端に寄せる」「切る」「余白を極端にする」の3つを必ず入れる
失敗2:バランスが悪くて落ち着かない
原因: 重心が偏りすぎている(偏り自体は悪くないが意図がない)
対策: 反対側に“支え”を置く(影・小物・線・色の面積)
失敗3:主役が弱い
原因: 余白や背景が主役を食っている
対策: 主役のコントラスト(明暗・彩度・エッジ)か、面積を上げる
1週間の練習メニュー(続く形にする)
Day1:位置だけ(9案)
主役の配置だけ変える。描き込み禁止。
Day2:サイズだけ(9案)
極端に大きい/小さいを必ず入れる。
Day3:縦横比だけ(6案)
縦長・横長・正方形で同じモチーフ。
Day4:視点だけ(6案)
俯瞰/あおり/斜め。
Day5:動線設計(6案)
斜め・S字・三角を意識して配置。
Day6:上位2案を小さく清書(2枚)
色は2〜3色でOK。
Day7:上位1案を作品サイズで制作(1枚)
“練習→作品化”まで行くと、販売用作品の構図力にも直結します。
作品制作にどう活きる?(販売・展示にも直結する理由)
構図が強い作品は、SNSでもショップでも有利です。
なぜなら、スマホの小さい画面でも「一瞬で伝わる」からです。
- サムネで目が止まる
- 主役が明確で説明が短くて済む
- 余白が整っていて“高級感”が出やすい
- 同じモチーフでもシリーズ化しやすい(構図違いの展開)
特に、シリーズやモチーフを大切にする作家ほど、「モチーフは一貫、構図で変化」が強い武器になります。
よくある質問(Q&A)
Q1:写真模写でもいい?
A:練習としては可能です。ただしネット画像は著作権が絡むため、公開・販売作品の元に使うのは避け、自分で撮影した写真が安全です。
Q2:どのくらいの期間で効果が出る?
A:確実な一般化データは提示できません。ただ、構図トレは「結果が見えやすい」ため、数十案作るだけでも変化を感じる人が多い練習です(これは経験則であり、統計としては断定できません)。
Q3:アナログとデジタル、どちらが良い?
A:どちらでもOKです。大事なのは「数を出す」「変数を構図だけにする」ことです。
まとめ|構図は“描写力とは別の才能”ではなく、鍛えられる技術
モチーフを変えずに構図だけを変える練習は、
手癖を壊し、見せ方を磨き、作品の説得力を上げる最短ルートのひとつです。
- モチーフ固定で原因が特定できる
- 強制ルールで手癖を外せる
- 小サムネ量産で構図の引き出しが増える
- 上位案を作品化すると、制作と販売に直結する
まずは今日、同じモチーフで9案作ってみてください。
「描く前に勝っている構図」が見えてくると、制作が一段ラクになります。













