絵を描くための画材には、油絵具、アクリル絵具、水彩絵具、パステルなど、さまざまな種類があります。
その中でも、身近で扱いやすい画材の一つが「色鉛筆」です。
色鉛筆というと、子どもの頃に使った画材という印象を持つ方もいるかもしれません。
しかし現在では、スケッチや塗り絵だけでなく、細密なドローイングや本格的な絵画作品の制作にも使われています。
実際、ホルベインのアーチスト色鉛筆も、スケッチや下絵だけでなく、ドローイングから本格的な絵画まで使用できる描画材として販売されています。
色鉛筆には、細かな部分を描き込みやすい、色を少しずつ重ねられる、比較的準備が少なく描き始められるなどの魅力があります。
一方で、色による耐光性の違いや、紙との相性、強く塗ったあとには修正しにくくなることなど、作品制作では知っておきたい注意点もあります。
この記事では、色鉛筆の特徴と魅力、そして色鉛筆作品を制作・購入するときに知っておきたい注意点をわかりやすく解説します。
色鉛筆とはどのような画材?
色鉛筆は、色のもととなる顔料などを含む芯を木軸などに収めた描画材です。
ホルベインでは、色鉛筆について、顔料をワックスや油脂などで練り、乾燥させた色芯を軸木に入れたものと説明しています。
色鉛筆は大きく分けると、
・油性色鉛筆
・水性色鉛筆
があります。
一般的に使われているのが油性色鉛筆です。
一方、水性色鉛筆、いわゆる水彩色鉛筆には、水で芯の色を溶かして水彩画のような表現ができる製品があります。
同じ「色鉛筆」でも性質が異なるため、作品を制作するときは自分が使っている製品の特徴を確認することが大切です。

色鉛筆の魅力① 細かな部分を描きやすい
色鉛筆の大きな魅力が、細かな部分を描き込みやすいことです。
芯を削って先端を細くすれば、
髪の毛
動物の毛並み
植物の葉脈
建物の窓
細い枝
小さな模様
などを描き分けることができます。
筆を使う絵具とは異なり、鉛筆を持つ感覚に近いため、線を主体とした表現にも向いています。
広い面を一気に塗るというより、細かな線や色の積み重ねによって画面をつくっていけることが、色鉛筆ならではの特徴です。
色鉛筆の魅力② 色を少しずつ重ねられる
色鉛筆では、一色だけで塗るだけでなく、複数の色を重ねながら色彩をつくることができます。
例えば青を薄く塗った上から紫を重ねたり、黄色の上からオレンジを重ねたりする方法です。
筆圧を弱くして薄い色を何層か重ねれば、最初から強く塗る場合とは違った色の見え方をつくることができます。
さらに、紙の凹凸をある程度残しながら塗れば、紙そのものの白を利用した表現もできます。
「赤だから赤色一本だけで描く」のではなく、何色もの色を重ねて一つの色をつくっていけるところも、色鉛筆の面白さです。
色鉛筆の魅力③ 準備が比較的少ない
色鉛筆は、絵具と比較すると準備する道具が少ないことも特徴です。
基本的には、
色鉛筆
紙
鉛筆削り
などがあれば描き始めることができます。
油絵具のように画用液を準備したり、水彩やアクリル絵具のように筆洗用の水を用意したりする必要もありません。
描くことを中断するときも、色鉛筆をケースへ戻せば比較的簡単に片付けられます。
こうした扱いやすさは、短時間のスケッチや外出先での制作にも適した特徴といえるでしょう。
色鉛筆の魅力④ 線と面を組み合わせられる
色鉛筆は「線を描く道具」でもあり、「面を塗る道具」でもあります。
尖らせた芯で細い線を描く。
鉛筆を少し寝かせて広い部分を塗る。
短い線を何本も重ねる。
異なる方向から線を重ねる。
このように描き方を変えることで、一種類の画材でも異なる質感を表現できます。
人物、動物、花、風景、静物、抽象画など、さまざまな題材に利用できる理由の一つです。

注意点① 耐光性はすべての色で同じではない
作品として色鉛筆を使用するとき、特に確認したいのが「耐光性」です。
耐光性とは、光を受けたときの色の変化に対する強さを示す指標です。
重要なのは、
「高級な色鉛筆だから全部退色しにくい」
「油性色鉛筆ならすべて耐光性が高い」
とは限らないことです。
例えばホルベインのアーチスト色鉛筆では、ASTM D6901に対応した耐光性表示が採用されています。
同じアーチスト色鉛筆でも、色によって耐光性の評価は異なります。
そのため販売する作品を制作する場合や、長期間保存する作品を描く場合には、メーカーのカラーチャートや耐光性表示を確認して色を選ぶことが重要です。
注意点② 強く塗るほど修正しにくくなる
色鉛筆は消しゴムである程度修正できる場合がありますが、鉛筆とまったく同じように消せるとは限りません。
特に強い筆圧で何度も塗り重ねると、紙の凹凸に色材が入り込み、完全に元の紙の状態へ戻すことが難しくなる場合があります。
そのため最初から強く塗るより、
薄く塗る
↓
色を確認する
↓
必要な場所へさらに重ねる
という順番で進める方法があります。
白い部分を残したい作品では、最初にハイライトの位置を決めておくことも重要です。

注意点③ 紙によって描き味が変わる
色鉛筆作品では、色鉛筆そのものだけでなく紙も重要です。
紙の表面には凹凸があり、その状態によって線や色の乗り方が変わります。
滑らかな紙なら細かな線を描きやすい一方、ある程度凹凸がある紙では、紙の質感を生かした表現ができます。
ただし、どの紙が最も優れているという一律の答えはありません。
使用する色鉛筆、描き方、完成させたい作品によって適した紙は変わります。
本作品を制作する前に、同じ紙の小片へ実際に色を塗り、重ね塗りや消しゴムによる修正などを試しておくと判断しやすくなります。
色鉛筆作品を飾るときも光に注意する
完成した色鉛筆作品を長く楽しむ場合は、展示する環境にも注意が必要です。
耐光性の高い色を使用していても、「どのような光にも永久に変化しない」という意味ではありません。
特に長時間強い光を受ける場所は避けることが大切です。
色鉛筆作品だけでなく、水彩画や紙に描かれた作品でも、作品保存を考える場合には光、湿気、汚れなどへの配慮が必要になります。
額装する場合には、作品表面を直接触らずに鑑賞できるという利点もあります。
まとめ|色鉛筆は繊細な積み重ねを楽しめる画材
色鉛筆は、身近な画材でありながら、使い方によって本格的な絵画表現まで広げることができます。
細い線を描く。
薄い色を重ねる。
複数の色を混ぜる。
紙の質感を残す。
細かな部分を描き込む。
こうした一つひとつの作業を積み重ねながら作品をつくれることが、色鉛筆の大きな魅力です。
一方で、耐光性は色によって異なり、紙の種類や筆圧によっても仕上がりは変化します。
作品として長く残したい場合には、単に「きれいな色だから」という理由だけで選ばず、メーカーが公開している耐光性表示なども確認することが大切です。
画材にはそれぞれ異なる特徴があります。
色鉛筆、アクリル、油彩、水彩などの違いを知ることで、作品を見るときにも「どのように描かれているのだろう」という新しい楽しみ方が生まれます。














