パステルの魅力と注意点|やわらかな色彩表現と作品を長く楽しむためのポイント

エドガー・ドガ「エトワール」

絵画に使われる画材には、油絵具、アクリル絵具、水彩絵具、色鉛筆など、さまざまな種類があります。

その中でも、色そのものを紙へ直接のせるような感覚で描ける画材の一つが「パステル」です。

パステル画を見ると、

「どうしてこんなにやわらかな色に見えるのだろう」

「チョークやクレヨンとは何が違うの?」

「パステル画は触ると色が落ちるの?」

と疑問を持つ方もいるでしょう。

パステルには、筆を使わず直接描けること、色を重ねたりぼかしたりしやすいこと、顔料の色を生かした表現をつくりやすいことなどの魅力があります。

一方、特にソフトパステルでは表面が擦れやすく、完成後の取り扱いや額装、保存方法にも注意が必要です。

この記事では、パステルとはどのような画材なのか、その魅力と注意点をわかりやすく解説します。

パステルとはどのような画材?

パステルは、顔料などを棒状に固め、紙などの支持体へ直接描くことができる画材です。

ホルベインでは、筆やパレットを使わず直接紙に描ける棒状絵具としてパステルを紹介しています。

ただし、「パステル」と呼ばれる画材がすべて同じ性質を持っているわけではありません。

代表的なものには、

・ソフトパステル
・セミハードパステル
・オイルパステル

などがあります。

ソフトパステルは粉状の質感を生かした描画に向いています。

一方、オイルパステルは顔料をワックスと油で練った棒状の絵具です。ホルベインでは、柔らかな描き味を特徴とし、油絵具用溶剤によって溶かすこともできると説明しています。

そのため、「パステル画」という言葉だけを見るのではなく、どの種類のパステルが使われているのかを確認することが大切です。

パステルの魅力① 色を直接画面へ置ける

パステルの大きな魅力の一つが、筆を使わず、色材そのものを持って描けることです。

水彩やアクリル絵具では、

絵具を出す
↓
水やメディウムで調整する
↓
筆につける
↓
画面へ塗る

という工程があります。

パステルでは、棒状の色材を直接紙へ当てて線や面をつくることができます。

先端を使えば線を描き、側面を使えば広い面へ色をのせることもできます。

「描く」と「色を塗る」の両方を一本の画材で行いやすいことが、パステルならではの特徴です。

パステルの魅力② ぼかしやグラデーションをつくりやすい

ソフトパステルでは、紙へ置いた色を指や専用の道具などでぼかす表現があります。

例えば、

青から水色へ変化する空
夕焼けの赤から黄色への変化
人物の肌の微妙な陰影
雲のやわらかな輪郭

など、境界をなじませながら描くことができます。

反対に、すべてをぼかす必要はありません。

はっきりした線を残す場所と、ぼかした場所を組み合わせることによって、画面の中に変化をつけることもできます。

パステルでは、色を混ぜ合わせるだけでなく、「どこまで線を残すか」も表現の一部になります。

パステルの魅力③ マットで独特な色彩表現ができる

ソフトパステルは、油絵具のような強い光沢とは異なる、比較的マットな見え方をつくりやすい画材です。

顔料を含む色材が紙の表面に残るため、鮮やかでありながら、やわらかさを感じる色彩表現にも向いています。

ホルベインのソフトパステルも、顔料の耐光性を考慮した製品として販売されています。

ただし、耐光性は「パステルならすべて同じ」と判断してはいけません。

使用している製品や色によって条件が異なる可能性があるため、長期間展示する作品ではメーカーの耐光性表示を確認することが重要です。

エドガー・ドガ「青い踊り子」

注意点① ソフトパステルは表面を擦らない

パステル作品で特に注意したいのが、表面への接触です。

メトロポリタン美術館は、パステル画について、粉状の性質を持つため摩擦や擦れ、汚れに対して非常に傷つきやすいと説明しています。

完成したソフトパステル作品を、

指で触る
布で拭く
紙を直接重ねる
作品同士を擦り合わせる

といった扱いをすると、表面の色材が動いたり、描画部分を傷めたりする可能性があります。

「絵だから乾けば触っても大丈夫」と考えず、使用画材に適した取り扱いをすることが重要です。

注意点② フィキサチーフを使えば必ず安心とは限らない

パステル作品では、色材を定着させるためにフィキサチーフと呼ばれる定着液が使われる場合があります。

しかし、使用すれば何の影響もなく完全に固定できるとは限りません。

メトロポリタン美術館では、フィキサチーフによってパステルの粉が圧縮され、色が暗く見えたり、表面から反射する光が減少したりする可能性があると説明しています。

つまり、

「たくさん吹き付ければ安全」

とは考えないほうがよいでしょう。

使用する場合は、製品の説明を確認し、作品への影響も考えて使用する必要があります。

注意点③ 額装では作品表面を保護する

ソフトパステル作品を飾る場合は、表面への接触を防ぐことが重要になります。

作品をむき出しの状態で飾ると、人の手や物が接触する可能性があります。

額装する場合も、作品の描画面がガラスやアクリル板へ直接触れない構造になっているか確認することが大切です。

パステル作品を購入するときには、

額装されているか
表面保護はどのようになっているか
どの種類のパステルが使われているか

なども確認すると、購入後の取り扱いを判断しやすくなります。

直射日光や極端な環境を避ける

パステルに限らず、絵画作品を長く楽しむためには展示環境も重要です。

直射日光が長時間当たる場所や、温度・湿度が大きく変化する場所を避けることが基本になります。

ホルベインもソフトパステルについて、湿気や乾燥といった環境変化の影響を受けやすい画材であることを説明しています。

窓際、結露しやすい壁、水回りの近くなどは、作品を飾る前に環境を確認しましょう。

パステルだからこそ生まれる表現を楽しむ

パステルには、

直接描ける
色を重ねられる
ぼかせる
線を残せる
やわらかな色面をつくれる

という独特の魅力があります。

一方で、特にソフトパステルには擦れやすさがあり、フィキサチーフについても作品の見え方へ影響する可能性があります。

大切なのは、「パステルは扱いやすい画材」「パステルは保存が難しい画材」と一括りにするのではなく、種類や作品ごとの特徴を理解することです。

画材の性質を知って作品を見ると、色の重なりや線、ぼかし、紙の質感など、それまで気づかなかった部分にも目を向けられるようになります。

絵画を購入するときも、作品の題材や色だけでなく、「どのような画材で、どのような表現がつくられているのか」という視点から作品を見てみてはいかがでしょうか。

エドガー・ドガ「浴盤」
ABOUT US
満園 和久
3歳の頃、今で言う絵画教室に通った。その絵の先生はお寺の住職さんであった。隣町のお寺で友達の3歳児とクレヨン画を学んだ。 それ以降も絵を描き続け、本格的に絵画を始めたのは30歳の頃。独学で油彩画を始め、その後すぐに絵画教室に通うことになる。10年ほどの間、絵画教室で学び、団体展などに出展する。 その後、KFSアートスクールで学び油彩画からアクリル画に転向しグループ展や公募展等に出品し続け現在に至る。 ここ20年程は、「太陽」「富士山」「天使」をテーマにして絵画を制作。 画歴は油彩を始めてから数えると35年になる。(2024年現在) 愛知県生まれ 愛知県在住 満園 和久 (Mitsuzono Kazuhisa)